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経済指標
経済指標とは
経済指標はいろいろな情報を含んでいるが、マーケット参加者にとって重要なのは、それが金利に対してマーケットレートがどのように反応するか、または反応しているかを把握することです。そして、
- 1.金利予測
- 2.経済指標
- 3.マーケットレート
の3者を結び付けて考えることが重要になります。
特に、金利の判断をする時に重要なのが金利予測です。経済指標とマーケットレートとの間には、様々なマーケット参加者の金利予測が存在します。
そのため、経済指標とマーケットの関係をとらえるには、
- 経済指標が金利予測にとってどのような意味を持つか
- 得られた金利予測を踏まえてマーケット参加者はどのように対応すべきかまたはしているか
という2つのアプローチで判断する必要があります。
金利、為替について 当ホームページの『外国為替講座』『国際金利講座』にも変動要因の解説がありますが、金利とそれぞれの市場の対応との関係を考えてみましょう。
まず、金利については説明のために債券相場を例にしてみます。いま、市中金利2%に等しい利回りの債券を保有しているとします。ここで金利が将来3.5〜4.0%に上昇すると予想されると、その投資家であるあなたはどのように行動すべきでしょうか。基本的には、いま持っている債券を売却して近い将来利回りが上がるまでキャッシュポジションを厚くし、利回りが上がった段階で、高い利回りの債券を将来購入するという方法を取ることが最善です。逆の場合には高い債券の運用を多くすることが基本です。したがって、金利の上昇が予想される場合は、債券は「売り」となり、そういう姿勢が支配的になれば債券価格も低下することになります。逆に、金利の低下が予想される場合には、債券「買い」の人々が多くなり、債券価格は上昇・利回り低下という債券相場が主流となります。
一方、為替(対ドル・円)の場合はというと・・・。アメリカの金利は変わらないとして、日本の金利のみが上昇すると想定される時を考えてみましょう。全体のグローバルなポートフォリオを変えないとした場合、円建てで資産運用をする方がドル建てより有利と考えられますから、為替をみた場合、円は「買い」となります。したがって、円資産に対する需要も増加し、対ドル円レートは円高の方向に推移するものと考えられます。逆に、日本の金利低下が予想される場合は円は「売り」、対ドル円レートは円安となります。これは、金利相場が主たる変動要因となっている時ですが・・・。
代表的な経済指標
経済指標はほぼ毎日のように公表されています。
日本の場合は重要な指標の発表が月末・月初にかなり集中しているのに対して、アメリカではその発表日が比較的散らばっており個別指標に対する注目度がその分平均化しているように見えます。
また、四半期ベースの指標のスケジュールを見ると、特にアメリカの場合、GDPの公表が事前、暫定、最終推定値と1ヶ月ごとに発表されており、3ヶ月毎にしか発表されない日本の場合に比べてGDP統計に対するマーケットの注目度が高まる仕組になっているといえます。そのため、アメリカでは、各経済指標の動きに対する解釈も、GDPの動きと関連づけて行われることが多いのが特徴です。
このように経済指標には様々なものがあり、また、発表のタイミングも異なっている為、市場参加者としてはどの指標を特に注目すべきか考えてみましょう。参考として外為どっとコムの「経済カレンダー
」をご覧ください。
経済指標の特性について、次の点が上げられます。
- 1.指標統計の対象範囲
- 2.先行性
- 3.速報性
- 4.政策面
1.指標統計の対象範囲
その経済指標が経済全体の動きをより広くカバーしていればいるほど、その指標の利便性・重要性は高いと考えていい。その意味で、特に経済全体の動きを総括的に示すGDPや雇用統計は、例えば小売売上高(個人消費の一部を構成するにすぎない)よりも重要な指標と言える。他の指標にしても、市場がその注目度を重視した時には、その動きを見る必要があります。
表1、表2は、一般の解説書や経済統計の出版物に掲載された分類に基づいて一覧にしたものです。主要な経済指標をGDPの各構成項目に対応させて分類したものです。
ただし、調査対象が広ければそれでよいというわけではありません。特に景気を中心に市場の関心が強い時には、消費関連のデータは、指標の統計対象の範囲が広いにもかかわらず、他の指標に比べるとかなり安定した動きを示す傾向があります。したがって、市場の注目が、景気の短期的な動きを注目する場合には、設備投資や住宅投資、あるいは在庫投資などのように、GDP・雇用統計に比べてやや劣っても短期的な景気循環の"波"を構成する指標に注目する必要が出てきます。ここでも、市場の関心に注目した経済指標を観察することが重要となります。市場を知ること意外にありません。
2.先行性
市場の参加者にとって、いまの経済状態そのものよりも、これからどうなるかどのような予測(シナリオ)が描けるかが重要になります。ディーラーとして、そのストラテジを描く能力の有無が大切です。特に景気の転換局面において、いつその時機となるかを特定しシナリオを描くことは相場に対峙するものにとって死活問題となります。
その時期が問題となっている場合には、当然景気の先行きをより正確に示す指標が注目を集めることになります。この時、先行指標として経済全体の景気回復に先んじて上昇・下降する傾向の強い住宅関連指標、将来の設備投資や生産等の動向を占う各種受注統計などに注目が集まります。また、一般にマネーサプライも、実体経済や物価動向に対してある程度の先行性を持つと考えられ重要視されます。
| GDP | GDP、雇用統計、全米購買部景気指標、鉱工業生産・設備稼働率、失業保険新規申請件数、景気総合指数、労働生産性/単位労働コスト |
|---|---|
| 個人消費 | 小売売上高、個人所得・消費支出、乗用車販売台数、消費者信頼感指数、消費者信用、ジョンソン・レッドブック |
| 民間固定資本投資・設備投資 | 耐久財受注・出荷、製造業出荷・在庫・受注、建設支出、設備投資調査 |
| 住宅投資 | 住宅着工・許可件数、新設住宅販売件数、建設支出 |
| 在庫 | 企業在庫・売上高 |
| 純輸出(輸出・輸入) | 貿易統計、国際収支統計 |
| 政府支出・連邦政府・地方政府 | 財政支出、雇用統計、建設支出 |
| インフレ指標 | 生産者物価指数(PPI)、消費者物価指数(CPI)、雇用コスト指数、労働生産性/単位労働コスト |
| GDP | GDP、企業短期経済観測調査(短観)、労働力調査、鉱工業生産(生産)、景気動向指数 |
|---|---|
| 個人消費 | 自動車新規登録台数、大型小売店販売、家計調査、消費動向調査 |
| 民間固定資本投資 ・設備投資 |
鉱工業生産(資本財出荷)、機械受注、企業短期経済観測調査(短観)、建設工事受注、法人企業動向調査
法人企業統計 |
| 住宅投資 | 新設住宅着工戸数・着工床面積、建設工事受注 |
| 在庫 | 鉱工業生産(在庫) |
| 純輸出(輸出・輸入) | 通関統計、国際収支統計(経常収支) |
| 政府支出、最終消費支出、 固定資本形成、在庫 |
機械受注、建設工事受注 |
| インフレ指標 | 卸売物価指数(WPI)、消費者物価指数(CPI)、企業向けサービス価格指数(CSPI) |
3.速報性について
先行性が指標そのものの性格を示すものであるのに対し、速報性は指標の公表のタイミングに係ってきます。景気の動向がいろいろ議論されているとき、それを最も早く教えてくれる指標の動きにマーケットが注目するのは言うまでもありません。米国の場合、全米購買部景気指数、乗用車販売台数、雇用統計がかなり早い時点で最近月の実体経済の動きを示しておりその点では速報性があるといえます。
特に、雇用統計は、他の景気関連指標の動きを先取りする傾向があるため、マーケットの注目を浴びています。この背景として、米国の場合、1929年の世界恐慌以来全体的な雇用情勢が経済政策運営の柱となっていることに起因しているといわれています。
一方、欧州の場合この恐慌での経験からかインフレに対する警戒感が強く経済政策運営の柱を物価動向においています。
月の中旬から下旬にかけては重要な指標が発表されますが、すでに発表された指標(特に雇用統計)のトレンドを追認するにすぎなければ、その情報価値は低いものと判断される傾向が強いです。そのため、米国の場合、雇用統計の動向でその月のストラテジを考えることができます。しかし最近は、雇用情勢の転換点がいつかを市場の参加者が注目しているためか、この雇用統計に先んじて発表される(毎週木曜日)失業者申請件数に注目した人々が多くなっています。
4.政策面について
ところで、冷徹な数値である経済統計指標の中で、最も注目すべき物は何かを考えなければいけません。そこで、金融当局が重視している(あるいは重視していると考えられる)経済指標に注目してみる必要があります。
1980年代のボルカー連銀総裁当時はサプライサイドの経済理論をベースにマネーサプライが注目され(米国経済の再生復興を目的にした資本注入)、1990年代初頭の金融緩和局面においてはグリーンスパン連銀総裁のもとFRBが最も重視していたのは、前出の雇用統計、特に非農業部門雇用者数の動きでした。
1994年年初以降、景気が回復軌道に乗っていることが明確になってきたことを受けて、FRBは引きしめスタンスに転じています。
一方、1995年のメキシコ危機・1997年以降のアジア危機・ロシア危機・ブラジル危機が米国経済に影響が及ぶ可能性が出てくるとFRBは躊躇なく金融緩和政策にスタンスを変更しているところから、その政策は市場の反応に対して敏感に反応するようです。日本の金融政策とは対照的に基本的に、米国の利益を優先にした金融政策が取られていると考えて間違いはないでしょう。そして、その最終目的は、一方で長期金利の水準(企業金融の調達目的)と米国の株式相場のあり方(直接金融市場の活性化)に集中していると考えられます。
しかし、フェデラル・ファンド・レートの引き上げの時期については、やはり雇用統計が重要な鍵を握っていると考えられます。米国の為替に限らず債券相場・商品相場も米国経済の行方を占うように相場が形成されているためだからです。
物価関連の指標やマネーサプライも金融政策にとって重要な指標である、あるいはそう信じられています。マーケット参加者としても、こうした指標の公表を受けてFRBがどのような政策対応を示すかという点に注意せざるを得なくなっています。『市場中心の経済運営が米国の利益』とする考え方が主流となっているからでしょう。
一方、日本の場合は、日銀の政策変更と経済指標の公表タイミングとの間にそれほど明確な相関関係はないように思われる。四半期に一度公表される「企業短期経済観測調査」(「短観」)「情勢判断資料」などで、日銀の経済に対する見方の変化を探るしかありません。そして、この政策について海外からの信頼を得ているかも重要です。現状では、米国以外『内政干渉の無い国』はありません。
金融当局が重視する指標は、そのときどきで変わる可能性があります。金融政策に景気回復の責任が負わされていると見られる場合は景気関連指標が重視されるが、インフレ抑制が重要な政策課題であれば物価関連指数が、また、対外不均衡がそれであれば貿易関連指標が重視されるということです。
この点では、米国連銀等の重要人物の発言が参考になります。彼らの発言の真意を探るべくマスコミのレポートが出されています。これらを参考にするのも一つの手段といえます。注意しなければならないのは、注目の経済指標の数字は一つでもその解釈は様々なものとなります。そこで体勢的な意見がどういうことかをつかむことと、その意見にはあまり固執しないように、そして柔軟な発想をもって冷静にみることです。
いずれにせよ、経済指標については、各指標の「持ち味」を最大限に利用してマーケットの戦略に生かす工夫が必要となります。
一方でマーケットの経済指標に対する信頼性を減殺するものとして、指標の変動の大きさや、修正の幅が挙げられます。いくら重要であっても、毎月の変動が大きければその変化をどう解釈してよいか判断に困ることがあるし、一度公表された数字があとでコロコロ変わるようだと、へたに反応しては危険だということになります。なかでも受注統計は、こうした点でかなりその信頼性を失っているようです。
